児童虐待に関する海外の状況の把握と分析

2021年度研究

  • フランスの児童福祉制度視察報告書

    研究代表者名 川﨑 二三彦(子どもの虹情報研修センター)

    1. 目的
     フランスでは、1889年、児童保護のための法律(「虐待され、又は精神的に遺棄された児童の保護に関する法律」)が制定された。親権の剥奪に対する司法判断についても定められたこの法律は、児童虐待防止に関する法律として世界的にみても初期のものである。現在の児童虐待防止・児童保護については、関連法令が多数あるだけではなく、関連する機関・団体も多数存在し、重層的で複雑なしくみとなっている。またフランスは、出生率が1.87(2019年フランス国立統計経済研究所(INSEE))と先進国のなかでは高水準にあり、少子化対策の成果が出た国として知られている。
     そこで本研究では、虐待防止の取り組みについて長い歴史と手厚い家庭支援制度を有するフランスの子どもと家族への包括的支援のしくみ及び児童虐待・児童保護対応について、制度・政策、主要な機関、支援と対応のプロセス、現状(統計)に関する情報を収集・整理し、日本にとって有用な視点を考察する。

    2. 方法
     資生堂社会福祉事業財団が主催するフランス児童福祉リモート研修に参加し、情報を収集・整理し、分析を行った。研修は、2022年1月から2月にかけて12日間の日程で実施された。研修における視察先は、児童家庭担当行政、児童保護対応機関、通告電話サービス機関、里親支援機関、養子縁組あっせん・支援機関、在宅支援措置提供機関、施設(一時保護を行う養護施設、非行少年保護施設など)、医療機関、警察、教育機関等17ヵ所で、このほか、児童虐待の当事者、児童精神科医、現地在住の日本人研究者へのヒヤリングを行った。

    3. 結果
     収集した情報の考察・分析結果は、2022年度内に報告書として取り纏める。

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2020年度研究

  • 海外の児童虐待防止の取組みに関する調査研究

    研究代表者名 増沢 高(子どもの虹情報研修センター)

    1.目的
     日本における子ども虐待対応体制を検討するために、海外における取り組みの情報は重要な基礎資料となる。しかし、海外における相談体制や地域のネットワークによる支援、あるいは家族支援の取り組みに関して、まとまった情報は少ないのが実情である。そこで世界の主要国における子ども虐待対応に焦点を当て、統計、法制度、支援機関、サービスの内容等、多角的に情報収集を行い、必要な情報を整理した。
    2.研究の内容
     2020年度は、以下の7か国の情報を収集し比較検討を行った。
    北米:アメリカ、カナダ
    ヨーロッパ:イギリス、ドイツ
    北欧:フィンランド
    オセアニア:オーストラリア
    アジア:韓国
     各国の人口等の概要を抑えた上で、児童虐待対応に関係する情報として、以下の内容を収集・整理した。
    ① 基盤となる法律やガイドライン
    ② 児童虐待対応の中心機関(設置数や人員を含む)
    ③ 児童虐待対応を踏まえた統計(通告数、調査件数、虐待認定件数など)
    ④ 代替養育の種類と人数
    ⑤ 虐待による死亡事例数、人数
    ⑥ その他
     以上をもとに、日本も含めて各国の比較検討を行った。
     なお、情報はデータベース化してセンターのホームページに公開予定である。

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2019年度研究

  • 児童虐待対応における海外の情報共有システムについて(オーストラリア、イギリス、カナダ)

    研究代表者名 増沢 高(子どもの虹情報研修センター)

    1 目的
     児童虐待ケースへの介入、調査、支援において、これに携わる諸機関および自治体間で、ケースに関係する情報を共有することは重要である。日本でも、こうした情報共有システムの重要性を踏まえ、その整備を始めようとしている。そこで、海外で児童虐待に先進的に取り組んでいる諸外国(オーストラリア、イギリス、カナダ)の情報共有の取組みについて、以下にあげた事項について把握し、日本での情報共有システム構築に必要な視点を整理することを目的とする。
    ① 子どもと家族サービスの概要、児童保護対応のしくみ
    ② 多機関情報共有/管理システムの概要
    ③ オンラインによる機関間情報共有システム(Child Story等)について
    2 方法
     以下の方法で調査を行った。
    ① インターネットでの調査:いずれの国においても情報共有に関する法制度等、政府のホームページ等で公開している情報を把握し、整理した。
    ② 視察
      ・ オーストラリアに関しては、2020年3月上旬にニューサウスウェールズ州の行政機関等に視察を予定していたが、感染病(COVID-19)の影響で視察は行えなかったため、視察先(同州政府機関Department of Family and Community Services)に質問を投げかけ、その回答を元に整理した。
      ・ イギリスの関しては、2018年に視察を行っており、視察先(ハートフォードシャー州のCSC)で得た情報を元に整理した。
      ・ カナダについては、カナダ在住の専門家が調査を行って情報を把握し整理した。
    3 結果の概要
    ① オーストラリア(ニューサウスウェールズ;NSW)
     児童保護と予防的支援の基盤となる法制度とCS(Community services ; CS)の役割と児童虐待の現状をまとめた上で、虐待対応に必須となる情報共有のための法制度と具体的な情報共有システム(Child Story)について、その詳細を把握しまとめた。
     児童保護サービスに関する特別委員会の報告書(2008年)は、脆弱な子どもとその家族にサービスを提供する上で、機関間協働は必須であり、そのためには多くの機関から情報を集積、総合させ、子どもと若者の全体像を把握する必要があるとした上で、国家プライバシー法および規制の体制が、機関間協働の主要な障壁となっていることを委員会は指摘し、支援サービスと司法部門における行政機関と民間機関の情報交換を推進するための法改正を勧告した。これを受け、児童保護サービスの基盤法となる児童青少年(ケア・保護)法1998第16A章(Children and Young Person(Care and Protection)Act 1998 Chapter16A)が2014年に改正された。
     改正法では、情報共有に関して以下の4つの基本原則を示している。
      ・ 所定の機関は、子どもの安全、福祉、より良い暮らしを促進するための情報を提供し、受け取る必要がある
      ・ 所定の機関は協力し合い、互いの機能と専門性を尊重すべき
      ・ 所定の機関は、子どもとその家族へのサービス提供を容易にするために、お互いにコミュニケーションを取ることが必要
      ・ 子どものケアと保護に関するサービスを受ける上で、子どもその家族のニーズと関心は、秘密保持または個人のプライバシーの保護よりも優先される
     NSW政府は、情報共有のオンラインシステムとして、2014年から「Child Story」の開発に着手し、2016年に第1段階として、児童保護機関間での情報共有システムをリリースした。その後、情報共有する機関対象等を拡大し、2019年12月の段階では、NSW警察・保健・教育機関、支援機関、通告義務者等が利用できるシステムまで構築できている。このシステムの管理は、NSWのコミュニティイジャスティス省におかれている。なお。このシステム開発には約1億3,100万Aドルが投じられている。
    ② イギリス
     児童の安全保障と児童保護の基盤となる法制度、CSC(Children’s Social Care)の役割と現状、児童保護重視から早期支援重視への変遷をまとめ、支援に必要な情報共有のあり方について、ハートフォードシャー州で用いられている「アーリーヘルプ・モジュール(Early Help Module)」を中心にまとめた。
     イギリスでも個人情報の保護法等が足かせとなって、情報共有の妨げになる場合もあるとの認識がされている。そのため必要な情報共有の指針として、国からの法定指針(HM Government, 2018c)や通知(HMGovernment, 2018a)、各自治体の指針(MASH Information Sharing Guidance/Agreement等)に情報共有の必要性とルールが定められている。原則として本人の同意を求め、同意が得られない場合でも合法的な理由(重大な危害の可能性、犯罪の阻止・捜査など)があれば情報共有できることを認めている(EU一般データ保護規則、2018年データ保護法)。
     イギリスでは近年、重大な害に進行しないための早期支援(Early Help)に力を入れている。そのためには、学校や保健機関などの機関同士の情報共有が欠かせない。ハートフォードシャーのCSCでは、アーリーヘルプサービスを利用した子どもと家族の情報は全てデータベースに保管される。このデータベースをアーリーヘルプ・モジュールといい、CSCが情報管理を行っている。支援を行う複数の機関(パートナー機関)には、必ず専任のワーカー(キーワーカー)が配置されており、トレーニングを受けた上でアーリーヘルプ・モジュールに必要な情報を提供、あるいは支援を行うために、ここにアクセスし、情報を利用することができる。
    ③ カナダ・オンタリオ州
     オンタリオ州では、CASは365日24時間児童保護サービスを提供する法的責任を負う唯一の民間機関である。CASの活動と目的は、「子ども青年家庭サービス法」に定められている。
     CASが収集する情報には、支援対象児の生年月日、連絡先、利用者および/または家族との会議の記録、受けたサービス内容、参加したプログラム、身体的・精神的な保健に関する詳細情報、医療、心理に関する報告、学校情報、財務情報、職歴、児童虐待の通報または調査結果、裁判所の書類、警察による介入、犯罪歴など利用者にサービスを提供するために収集された個人情報が含まれる。利用者の個人情報は安全かつ確実に保管管理され、利用者は、CASがサービスに関する情報をどのように使用し提供するのか、また、サービスに関する情報にアクセスする方法を知る権利を有する。
     CASは、通告されたケース、子どもに危害を加える状況の未然防止、支援サービスを提供する場合など、情報共有が必要な20の場面を明確にして、情報の共有を図っている。

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2018年度研究

  • イギリスの児童福祉制度視察報告書

    研究代表者名 増沢 高(子どもの虹情報研修センター)

    1.児童福祉におけるイギリスの状況と児童福祉施策
     (1)イギリスの概要
     (2)イギリスにおける子どもと若者、家族に関する諸問題
     (3)イギリスの子どもの安全保障(Safeguard)と児童保護(Child Protection)について
     (4)児童家庭ソーシャルワーカーの人材育成 
    2.視察先報告
     ①アイリーン・ムンロー教授講義 「The Munro Review of Child Protection」について
     ②ディビッド・ゴフ教授とのディスカッション 日本とイギリスの児童虐待対応について
     ③ナオミ・ドイチ氏講義 児童保護における裁判所の関与
     ④ルイーザ・マクギーハン氏講義 子どもの貧困とその対策の変遷について
     ⑤マイケル・キング博士講義 児童相談所-The Family Bond と里親委託率
     ⑥小川紫保子氏講義 傷つきやすい子どもを援助する慈善事業団体とコミュニティ
     ⑦Hertfordshire Children’s Social Care(ハートフォードシャー児童保護サービス機関:CSC)
     ⑧Leeds Children’s Social Care(リーズ市児童保護サービス機関)
     ⑨Leeds Safeguarding Children Partnership(リーズ市の多機関協働)
     ⑩Falcon Grove Family Assessment Centre(入所型親子アセスメントセンター)
     ⑪Adel Beck Secure Children’s Home(非行少年保護施設)
     ⑫Five Rivers Child Care(フォスタリング、入所型ケア、教育による治療的総合支援)
     ⑬Foster Care Associates(FCA)South East(フォスタリングサービス)
     ⑭National Society for the Prevention of Cruelty to Children(英国児童虐待防止協会:NSPCC)
     ⑮The Lucy Faithfull Foundation(子どもへの性犯罪防止のための啓発団体)
     ⑯Women’s Aid Federation(ドメスティック・アビューズ対応機関連合)
     ⑰Mermaids(トランスジェンダーの子どもと家庭への支援団体)
     ⑱Refugee Council, Children Section(難民救助団体児童部門)
     ⑲The British Association of Social Workers(英国ソーシャルワーカー協会:BASW)

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2017年度研究

  • ルーマニア・ドイツの児童福祉制度視察報告書 Ⅰ.ルーマニア編

    研究代表者名 川松 亮(子どもの虹情報研修センター)

  • ルーマニア・ドイツの児童福祉制度視察報告書 Ⅱ.ドイツ連邦共和国編

    研究代表者名 川松 亮(子どもの虹情報研修センター)

2014年度研究

  • アジアにおける児童虐待への取り組みに関する研究 体罰の防止に向けて (第2報)

    研究代表者名 柳川 敏彦(和歌山県立医科大学)

    虐待に対する取り組みの先進国である欧米諸国の実態や取り組みは、従来からわが国に紹介され、わが国の対策の一助となっている。一方、アジア地域で子どもの人権擁護の概念が今なお乏しく、家庭、学校等における体罰の是非についての社会的課題が依然大きく残されている。本課題研究は2年間研究で、アジア各国の児童虐待の現状を明らかにすること(25年度)、体罰対応の課題を抽出・分析し、アジアにおける今後の虐待対策に資すること(26年度)を目的とした。
     26年度研究では、国際児童虐待防止学会の中で開催された新興国フォーラムでの「体罰の撲滅」ワークショップからアジア各国(イラク、日本、中国、韓国、タイ)の報告等を収集した。
     現状は家族/家庭、学校、地域等、日常の場面で児童への体罰が広く蔓延していることが再確認された。体罰の定義・認識は強者の立場による定義が使用されていること、「児童の権利」が依然として尊重されていないこと、体罰による児童への悪影響の知識が不十分であることなどが課題として抽出された。「体罰の撲滅」への対応は、あらゆる子どもを対象に、いかなる場面、いかなる地域においても「児童の権利」を基盤とすることが必須であり、「体罰意識の変容」、「あらゆる体罰を禁止する法律」、「前向きな子育て」等のキーワードが採択された。今後は、多職種の関与による具体的、実践的な社会整備が望まれるとともに、若い世代に対して学校等の教育場面での周知が必要である。

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2013年度研究

  • アジアにおける児童虐待への取り組みに関する研究 体罰の防止に向けて

    研究代表者名 柳川 敏彦(和歌山県立医科大学)

    虐待に対する取り組みの先進国である欧米諸国の実態や取り組みは、従来からわが国に紹介され、わが国の対策の一助となっている。一方、アジア地域で子どもの人権擁護の概念が今なお乏しく、家庭、学校等における体罰の是非についての社会的課題が依然大きく残されている。
     本研究は、アジア各国の児童虐待の現状と課題を明らかにし、アジアにおける今後の虐待対策に資することを目的としている。本報告書に先駆け、「体罰」という社会的課題の解決への提言を目指し、アジア地域の子どもの専門家に参加を呼びかけ、アジア地域虐待防止ネットワーク(CANAL: Child
    Abuse and Neglect in Asian League)を編成した。また、研究成果の発表や研究意見交換の場としてホームページhttp://canal.wakayama-med.ac.jp/ を開設した。
     本報告書は、日本版ICAST(ISPCAN Child Abuse Screening Tools)の作成に加え、アジア地域のISPCAN研究者3名(中国、韓国、タイ)から収集した調査や地域の研究レビューなど4点を翻訳したものである。本報告書に掲載されている計5点の研究論文名は、以下の通りである。
    1) 柳川敏彦:日本版ISPCAN Child Abuse Screening Tools (ICAST)の信頼と妥当性の検討 その1-日本版ICASTの作成-
    2)Jiao Fuyong:中国本土における児童虐待とネグレクトの現状の分析と評価
    3) Yanghee Lee:韓国の国家児童保護サービスを受けている児童が経験した家族によるマルトリートメント
    4)Yanghee Lee:韓国における児童のマルトリートメント:後方視的研究
    5) Sombat Tapanya(タイ):9か国における子どもへの体罰:子の性別および親の性別による影響

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2007年度研究

  • イギリスにおける児童虐待の対応視察報告書

    研究代表者名 川﨑 二三彦(子どもの虹情報研修センター)

     イギリスは、児童虐待に対して19世紀からの長い取り組みの歴史を持つと同時に、近年、その制度や施策を大きく変化させている。したがって、イギリスの現在の児童虐待対応を深く学ぶことができれば、我が国の今後の児童虐待対策の発展にも大きく寄与すると思われることから、2007年4月、以下の4点を調査課題として、イギリス視察を行った。すなわち、①児童虐待対応の施策とシステム、②児童および家族への支援の実情-特に治療的ケアの状況、③児童虐待対応の専門職への研修のあり方、④児童虐待対応に関する教育と福祉の連携 以上である。
     これらの調査課題を達成するため、以下の12機関、施設、個人等を訪問した。すなわちIntensive Parenting Project(IPP)インテンシブ・ペアレンティング・プロジェクト/K&C Social Services(SSD)ケンジントン&チェルシー地区ソーシャルサービス/Sure Startシュアスタート/Tavistock Clinicタビストッククリニック/David Gough教授(ロンドン大学 Executive Director)/Jonathan Picken教授(BAPSCAN会長・ロンドン大学)/The Caldecott Foundationカルデコット・ファンデーション/NSPCC英国児童虐待防止協会/The Lister Primary Health Centreリスタープライマリーヘルスセンター/The Mulberry Bush Schoolマルベリーブッシュスクール/Department for Education and Skills 教育技術省児童保護局/National Children’s Home(NCH)ナショナルチルドレンズホーム、以上である。
     報告書では、これらの視察先の概要と併せて、今後の参考となるよう、帰国後に収集した資料なども含めて添付した。

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  • イギリスにおける児童虐待の対応視察報告書(資料編)

    研究代表者名 川﨑 二三彦(子どもの虹情報研修センター)

2003年度研究

  • ドイツ・フランスの児童虐待防止制度の視察報告書 Ⅰドイツ連邦共和国編

    研究代表者名 平湯 真人(平湯法律事務所)

     本報告書は、平成12年度に成立した児童虐待防止法が、当初から3年後の見直しを予定していたことを受け、関係各団体から多くの改正提言がなされている中で、子どもの虹情報研修センターとして外国法の調査を企画し、その一環として、平成15年6月に実施されたドイツ調査の報告書である(その一部は平成16年の防止法一次改正に活かされた)。
     当時のドイツは、虐待に特化した法整備はなされていなかったが、親権法(民法)については既にたびたびの改正で支配権的な色彩は払拭され、「子は暴力によらずに教育される権利を有する。体罰、精神的侵害およびその他の屈辱的な処置は許されない」などが明記されていた。また裁判所による柔軟な親権制限と行政(少年局)による子ども家庭福祉(青少年援助法)が連携し合って子どものケアと親の支援(家庭訪問による在宅支援など)を実現しようとしていること等が特徴的であった。ドイツでは、この調査時点以降にも引き続き親権法と青少年援助法が改正され、行政による初期介入権限の強化が導入されたりしたが、基本的には裁判所関与と親の支援を重視する理念は一貫している。
     日本では平成23年にようやく親権法の一部改正が実現したが、かつて日本と共通の親権法を持ったドイツが明確な理念と持続的エネルギーを以て改革を進めようとしている姿勢は、日本としてもあらためて学ぶべきであろう。

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  • ドイツ・フランスの児童虐待防止制度の視察報告書 Ⅱフランス共和国編

    研究代表者名 松井 一郎(子どもの虹情報研修センター)

    1 .児童虐待は世界の普遍的な事象で、古い時代の民話や児童文学などにも数多く記載され、現代まで引き継がれている。発生数は増大の一途を辿っており、かつては貧困が主要因であったが、現在ではネグレクトや心理的虐待まで広がり、決め手となる有効な対応策はない。それぞれの国における虐待防止の対応法令、児童福祉の諸法令、虐待防止の子育てスキルなどなど、数多くが実施されているが、海外の情報を検索、集約するとその殆どが英語圏のみのものである。毎年開催される学会の海外研究者の招待講演も、英語圏の学者に限定されている。
    2 .30年ほど前、フランスのパリ大学ルジェンヌ教授の<猫泣き症候群>の講演を拝聴した。仏語のできる医師が通訳に入ったが、途中で翻訳ができなくなった。ルジェンヌ教授は英語も極めて堪能であったが、5分、10分が過ぎても全くの知らぬ顔……。ダウン症の染色体異常を決定し、新しい症候群を数々発表してきた世界第一級の教授が!である。フランスは面白い国だと思った。
    3 .今回のフランス視察では多くの感銘を受けた。まず第一に、被虐待児の統計である。この統計はODAS(政府、県、市が出資するNPO法人)の統一国家統計で、虐待の定義や境界域、評価は明快である。米・英・独など連邦国家ではそれぞれの州政府が独自に統計に責任を持つため、国の統一統計とはならない。ODASの継続統計は驚きである。第二に、フランス全土の児童司法保護機関には子ども(少年)判事、子ども検事が専属で勤務し、乳幼児/青少年問題に対応している。第三には、「もしもし、こども虐待(SNATEM)全国統一119番」。その他、施設見学と帰国後の整理から学んだ点を列挙した。フランスは大統領制であるが、首相・閣僚・知事などは任命制である。利点と思われる点は、かの国の政治体制に大きく依存するのではないか? 視察は大きな収穫であった。

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  • アメリカにおける児童虐待の対応視察報告書

    研究代表者名 四方 燿子(子どもの虹情報研修センター)

     本視察は、虐待問題先進国である米国から我が国の虐待対応に役立つ情報を得るために企画されたものである。2004年4月に、次の4点を主眼としてロスアンゼルス郡を中心に視察が行われた。
    1.被虐待児の保護システムの具体的状況(介入と援助について)
    2.性虐待への対応(特にファレンジック・インタビューについて)
    3.児童虐待対応における連携アプローチ(特にマルチディシプリナリー・アプローチについて)
    4.児童虐待の治療の現状
     視察先は、トーランス警察、DCSF(ロスアンゼルストーランス支所)、チャイルド・クライシス・センター(ハーバードUCLAメディカルセンター内)、スチュアート・ハウス(サンタモニカUCLAメディカルセンター内)、チャドウイック・センター(サンディエゴ子ども病院内)、UCLAロスアンゼルス病院SCANチーム、米国空軍虐待対応システムのSWである。
     報告書では、米国における児童虐待の実情と背景、虐待対応の実際を論述した後、各視察先で得られた情報の詳細が記載されている。また、視察先で入手した資料1~24について子どもの虹情報研修センターで訳出したものが掲載されているので参考にされたい。

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