その他の研究
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「地方公共団体の児童虐待死事例の検証結果における再発防止策等の検討のための研究」
研究代表者名 増沢 高(子どもの虹情報研修センター)
2000 年に制定された「児童虐待の防止等に関する法律」(以下、児童虐待防止法)は、2004 年の改正の際に、国及び地方公共団体の責務として、「児童虐待の防止等のために必要な事項についての調査研究及び検証を行う」ことが明記された。これを受け、社会保障審議会児童部会の下に「児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会」(以下、検証委員会)が設置され、全国の児童虐待による死亡事例等を分析・検証し、全国の児童福祉関係者が認識すべき共通の課題とその対応を取りまとめ、制度やその運用についての改善等の提言を行うようになった。2005 年 4 月に第 1 次報告が公開され、以降毎年報告されて、現在は第 19 次報告が公開されている。また、2007 年の児童虐待防止法改正では、虐待による重大事例についての検証を地方公共団体の責務とした。以降、地方公共団体は、虐待による死亡事例で把握可能なものは全て検証の調査対象とし、特に重大事例が発生した場合、当該地方公共団体が、検証しその結果を報告書としてまとめ、その一部は公表され、子どもの虹情報研修センターで閲覧可能となっている。
報告書を概観すると、多くの事例で共通した課題と、特異な事例ゆえに生じている課題がある。また報告書では、課題の改善策が提言として示されているが、検証報告が責務となって約 20 年が過ぎた現在までの間、繰り返し示される提言内容も認められる。死亡事例の防止においては、同様の課題や提言が繰り返し、示され続けている背景理由や解決できない障壁等を明らかにする必要がある。その上で、背景理由や障壁等を解決し、地域の適切な児童虐待防止対応を展開していく有効な改善策を見出さねばならない。
以上の問題意識のもと、本研究全体(3 年計画)の目的を以下の通りとした。
①地方公共団体による検証報告書の内容について、児童虐待死事例の特徴、死亡等に至った要因、対応の経過と課題、今後に向けた提言等を精査、分析すること。
②共通して見出された課題や提言等が、児童相談所等の支援機関や地域の対応システムにどのように生かされ、実効性のある取り組みとして展開されているかについて、その障壁となる要因も含めて実態を明らかにすること。
③地方公共団体による検証報告書の分析や実態調査から得られた結果を踏まえて、児童相談所等における適切なシステムの在り方やチェック機能等を整理し、提示すること。
以上を踏まえて、以下の 3 段階で研究を進めることとした。
第 1 段階:地方公共団体による死亡事例に関する検証報告書報告や死亡事例に関する研究等、既存データ等の分析を通して、虐待死を防げなかった背景、対応上の課題等を整理する。
第 2 段階:児童相談所と市町村の実務経験者(10 年以上)に半構造化面接を行い、現状課題と改善が進まない背景要因と解決策について仮説を見出す。
第 3 段階:第 2 段階を踏まえて児童相談所と市町村に質問紙調査を行い、背景要因を明らかにし、解決策を提示する。
本年度は、3 年計画で実施される研究の第 1 段階にあたる地方公共団体による死亡事例に関する検証報告書報告等、既存データ等の分析を行った。 -
「児童相談所に配置される弁護士等を対象とした研修の効果的な実施方法に関する調査研究」報告書