人材育成に関する調査研究
2022年度研究
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オンライン研修の導入による変化と今後の展望
研究代表者名 中垣 真通(子どもの虹情報研修センター)
1.問題と目的
2019年度末から始まった新型コロナウイルスの感染拡大により、参集型研修の実施が困難になったため、子どもの虹情報研修センターでは2020年度からWeb会議ツールを利用したオンライン研修を導入した。2020年度初めの時点では、受講する側も容易にオンライン研修を受講できる環境になかったが、各職場の通信環境等のアンケート調査を行い、6月には試行的なオンライン研修を実施した。2020年度後半以降は、オンラインを主たる方法として研修を実施している。
本研究では、オンライン研修の効果と課題、今後の発展的利用の方向性を明らかにし、オンライン研修を活用するための有用な情報を提供することで、他機関が人材育成のために実施する研修のより一層の充実に資することを目的とした。
2.研究の内容
研究報告書の章立てに沿って紹介する。序章では、オンライン研修導入の前提となる社会背景や先行する取り組み、研修に関する理論や方法などについて先行研究を踏まえて、整理を行なった。
第2章では、虹センターが実施する専門研修の基本的な構想とオンライン研修の導入経過を概観した。オンライン研修の導入経過については、2020年度以前の取り組み状況から時系列で詳細に整理を行い、研修方法の大幅な変化に虹センターがどのように検討を重ね、対応してきたか報告した。オンライン研修を導入したことによって、研修の進め方に大きな変化が生じ、対面で実施する研修に比べると、オンライン研修は受講者間の相互交流に制約がある半面、事前に講義映像で予習するオンデマンド学習や講義中の一斉アンケートの実施が可能になる等の利点もあった。
第3章では、オンライン研修は、研修にどのような効果をもたらし、今後どのように発展が期待できるのか、アンケート調査の結果を報告した。2022年5月から11月に3つのアンケート調査を実施し、それぞれ958名、850名、563名からの回答を得た。特に、研修手法(参集、ライブ配信、オンデマンド配信など)や科目形態(講義、演習、グループ討議など)ごとの特徴、オンライン研修受講者の受講環境に着目して分析を行い、その結果を報告した。
第4章では、虹センターがオンライン研修を導入して得た経験とアンケート調査の結果、先行研究による知見を照合しながら検討を加え、今後の研修の方向性について考察した。また、虹センターがオンライン研修を実施する際に配布する操作手順書なども掲載し、関係機関においてオンライン研修を企画及び運営する際の参考資料を提示した。 -
専門職の養成と任用後の育成に関する研究:OJTとその評価をめぐって
研究代表者名 保坂 亨(千葉大学)
1目的
福祉領域においての専門性の確保について、特に児童福祉領域においては、その取り組みは遅かったと言わざるを得ない。しかし、「新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会」報告書(2016年)以降、ようやく本格的な議論が始まり、2022年に成立した「児童福祉法等の一部を改正する法律」において、新たなこども家庭福祉のソーシャルワーカーに関する資格を内閣府令で定めることが盛り込まれた。これを受けて、「子ども家庭福祉の認定資格の取得に係る研修等に関する検討会及びワーキンググループ」が設置されて議論を重ね、2023年3月に「とりまとめ案」が提出されたところである。
本研究(2020-2022年度)は、こうした動向の中で専門職の人材育成について、福祉領域以外に広く視野を広げて資格と育成の仕組みを比較検討することを目的としたものである。医学・法曹・教育・福祉領域では、同じ国家資格を有する専門職でありながら、その資格のあり方や育成方法は様々である。しかし、これらの領域を超えて専門資格や育成について比較・検討したものは、ほとんどないと言ってよい。そこで本研究は、多角的な視点から他領域の現状と課題を把握しながら比較検討することによって、資格を含めて児童福祉領域に必要な専門性や養成研修のあり方など人材育成に資する基礎資料の作成を目指して始められた。
2 方法及び結果
本(2022)年度は、福祉領域における大学及び大学院という養成段階、とりわけ実習に焦点をあてた調査研究を行った。具体的には、日本社会事業大学と長野大学大学院における人材育成の実際を面接調査によって把握した。なお、この日本社会事業大学の専門職大学院については、2021年度報告でも取り上げた。また、教育領域として香川大学の教職大学院の人材育成の実際を面接調査によって把握し、千葉大学教職大学院との比較検討を実習を中心に行った。
そして、これらの調査研究を踏まえて、以下三つの論考にまとめた。
1 研修における「履修」と「修得」
2 教員養成における実習から専門職の養成について考える
3 専門職の人材育成:領域を超えた検討
最後に福祉領域(こども家庭福祉)における認定資格の論点を整理した。さらに、領域を超えた課題である「専門家」資格の停止・剥奪問題に関する資料として、「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律」(2021年6月4日公 布)等を付した。
2021年度研究
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人材育成に関する調査研究 ─ 専門職の養成・育成における実習及び実務訓練─
研究代表者名 保坂 亨(千葉大学教育学部)
1 目的
現在、わが国では児童福祉司等の児童家庭ソーシャルワーカーの専門性の向上と、それに伴う国家資格化が課題となっている。2019年の改正児童福祉法において、児童福祉の専門知識・技術を必要とする支援者の資格の在り方や資質の向上策について、施行後1年を目途に検討を加えることが規定され、社会保障審議会児童部会社会的養育専門委員会に「子ども家庭福祉に関し専門的な知識・技術を必要とする支援を行う者の資格の在り方その他資質の向上策に関するワーキンググループ」が設置された。その結果、子ども家庭福祉分野で支援を行う者の専門性の向上が必要不可欠とされ、資格・研修・人材育成の在り方、人事制度・キャリアパスについて目指すべき方向性としての「とりまとめ案」が作成された。
本研究の1年目にあたる2020年度は児童福祉以外の専門職、特に古くから国家資格を有している医学・法学・教育における国家資格の在り方(業務独占・名称独占等も含む)、その養成(コアカリキュラムの位置づけ・実習を含む)と任用後の育成研修について等の歴史的経過を概観し、各専門職の現状と今日的な課題を把握した。さらに、医学・法学・教育学間で比較検討する作業を通して、児童福祉領域の専門性の在り方(資格及び養成・研修等)に資する課題を検討した。この研究において明らかとなったことは、専門職の養成や育成にとって現場の実務訓練が重要な意味を持つということである。
続く本研究(2年目)では、任用後の育成計画等のビジョン、インターンシップ(実務経験システム)、スーパーバイズ、人事交流など、特に育成のレベルに合わせた実務訓練(OJT)に焦点を当て、児童相談所の児童福祉司を中心に子ども家庭福祉領域における実態、及び養成校で実施されている実習、スーパーバイズ等についても現状と課題を把握することを目的とした。
2 方法・結果
以下4つの調査研究を行った。
① 岡山県・神奈川県・横浜市・港区児相の4か所に対する人事育成についての資料提供、及びOJTに関するヒアリング調査。
② 防衛医科大学(熊谷裕生教授)に対する医学領域における人材育成(特に初期研修)についてのヒアリング調査。
③ 日本社会事業大学(宮島清教授)に対する福祉領域における人材育成(特に実習)についてのヒアリング調査。
④ 立命館大学(仲真紀子教授)に対して、他職種連携による「司法面接」研修プログラムに関するヒアリング調査。
これらの調査結果をもとにして、2020年度に把握した医療、法曹、教育領域におけるOJTの状況との比較検討を踏まえて、子ども家庭福祉領域におけるOJTの体制や方法についての課題を分析・考察した。
2020年度研究
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人材育成に関する調査研究:専門職の養成と任用後の育成に関する研究
研究代表者名 保坂 亨(千葉大学教育学部附属教員養成開発センター)
1. 目的
本研究は、専門家の資格及び養成・育成の仕組みについては、児童福祉領域以外に視野を広げると様々な形態があり、それぞれの長所と短所から学ぶものがあるのではないかと考えたところから出発している。従って、本研究の目的は、資格を有する専門職であるものの、資格の条件や育成のあり方が異なる領域(教育・医療・法曹・福祉)を取り上げ、資格の形態、そのための養成、任用後の育成等の現状と課題を把握し、児童福祉領域に必要な専門性や研修方法のあり方など人材育成を検討するための基礎資料とした。
2. 研究の内容
研究結果は以下の通りである。
A) 医学・法曹・教育における国家資格の在り方(業務独占・名称独占等)、その養成(コアカリキュラムの位置づけ・実習を含む)と任用後の育成研修(実務訓練等)について以下の3論文を作成した。
① 「医学分野における人材育成:医師はいかにして『医師になる』に至るか」(独立行政法人国立病院機構東京病院呼吸器センター長・佐々木結花)
② 「法曹分野における人材育成:嵐の中の法科大学院」(千葉大学大学院社会科学研究院・林陽一)
③ 「教育分野における人材育成:教員養成・採用・研修の一体化」(千葉大学教育学部附属教員養成開発センター教授・保坂 亨)
B) 上記論文を読んだ研究者(保坂・増沢・高橋温弁護士)による討論会を実施した。なお、討論にあたっては上記論文を踏まえて、以下のように課題を整理した。
① 資格の範囲
② 養成段階の基本方針(閉鎖系 / 開放系)
③ コアカリキュラムの導入
④ 資格の在り方(業務独占 / 名称独占)
⑤ 実習改革
⑥ 免許更新制
⑦ その他(資格における国籍条項、旧姓使用問題)
その成果としての研究報告書の第一部論文編には、医学・法曹・教育の3領域における人材育成についての3論文を掲載した。続く第二部討論編は、それを踏まえて児童福祉領域の専門性・資格について意見交換を実施した逐語記録であり、第三部資料編はその関連資料を掲載したものである。なお、2019年に設置された「子ども家庭福祉に関し専門的な知識・技術を必要とする支援を行う者の資格の在り方その他資質の向上策に関するワーキンググループ」の中間報告(とりまとめ:2021年2月2日)を討論に際して参考としたため資料として掲載してある。
2018年度研究
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児童相談所と市区町村における児童相談担当職員の人材育成に関する研究(第2報)
研究代表者名 増沢 高(子どもの虹情報研修センター)
1.目的
急増する児童虐待通告に対応を迫られ、困難ケースも増加しており、児童の保護と支援を行う上で、児童相談所(以下、児相)にはより高度な専門性が期待されている。しかしながら、卒前教育のあり方や自治体の人事システムが、社会が必要とする児童福祉司の専門性確保に追いついていない現状もあり、その狭間にあって、職員のメンタルヘルス不調や早期異動希望者などの問題が発生している。そこで本研究では、スーパーバイズを担う児童福祉司が入職前に学んでいた専門領域および人事異動歴の実情を把握するとともに、それが児童福祉の専門性の意識や児童相談担当職員に求められる到達度の自覚にどのように関係しているかを調べ、今後の人材確保や異動のあり方を検討するための基礎資料となることを目的とする(研究1)。
次に、児童虐待防止に関して先駆的な取り組みをしているイギリスのChildren's Social Care(以下、CSC)におけるソーシャルワーカーの役割と専門性向上のための育成システム、およびキャリアロードマップについて調査するなどして、日本のソーシャルワーカーの育成のあり方にとって有用な視点
を考察することを目的とする(研究2)。
研究1 児童福祉司スーパーバイザーの職業的背景と専門性について
(1)方法
センターで行われた「児童相談所児童福祉司スーパーバイザー義務研修」の前期・後期ともに参加した160名を分析対象とした。ただし職業的背景に関する分析については、前期研修を受講した161名を対象としている。調査内容は、職業的背景、入職前に学んだ専門領域、現在の得意な専門領域への回答を求め、スーパーバイザーの到達目標に沿った自己評価得点との関係を調べた。
(2)結果
異動歴のパターンは①児相のみ群(現所属先にのみ勤務)、②初回群(児相以外の部署・機関から初めて児相に異動)、③児相間異動群、④以前1回群(児相勤務後に他部署・機関へ異動の後、再び児相)、⑤以前複数回群の5つに分けられた。
③児相間異動群は「アセスメントと支援方針」「機関連携」において②初回群、④以前1回群より高く、「ソーシャルワークの基本プロセス」「ケースマネージメント」では④以前1回群より高かった。③児相間異動群での専門領域は、学んだ専門領域は幅広いが、得意な専門領域は児童福祉が多かった群である。つまり、異なる児相を異動する中で児童福祉に対する知識や技術が身につき、児童福祉を得意として自覚できるようになり、そのことが到達目標の得点の差として表われたと考える。
また、④以前1回群については、「アセスメントと支援方針」「機関連携」「ソーシャルワークの基本プロセス」「ケースマネージメント」において③児相間異動群より低かった。以前1回群は行政職が多い群である。このことも踏まえると、この群は、自分の得意な専門は児童福祉としながらも、実際の実務機能となると、まだ十分な専門性を身につけるに至らず、困難さを自覚しやすいのかもしれない。
以上を踏まえると以下のことが可能性として見えてくる。児相の児童福祉司が様々な専門領域から任用される実態から、当然児童福祉を得意でないとする者も実務を行うことになるが、1箇所の児相経験だけでなく複数の児相を経験することで、児童福祉を得意な専門領域と意識し、到達目標の達成度も上昇するという可能性である。児童福祉司の人事を行う際、児童福祉スーパーバイザーとしての専門性を高めるためには、複数の児相経験が有効であることが示唆された。
研究2 イギリスにおける児童家庭ソーシャルワーカーの役割と育成について
(1)目的
イギリスの児童家庭ソーシャルワーカーの歴史的変遷を踏まえた上で、日本の児童相談所に当たるChildren's Social Care(以下、CSC)におけるソーシャルワーカーの役割と専門性向上のための育成システムを把握し、併せてキャリアロードマップの実際をヒアリング調査するなどして、日本のソーシャルワーカーの育成のあり方にとって有用な視点を考察することを目的とする。
(2)方法
資生堂社会福祉事業財団主催の第44回児童福祉海外研修がイギリスの視察であり、それに同行し、以下の方法で情報を集め、整理、分析の対象とした。視察期間は2018年9月25日(火)から10月7日(日)であった。
・ 児童家庭ソーシャルワーカーが従事し、中心的あるいは重要な役割を担っている機関の視察およびヒアリング
・学識者へのヒアリング
・現任のソーシャルワーカーへのヒアリング
・関連する資料の収集
(3)内容
1.児童虐待防止におけるChild Family Social Workerの歩み
2.Children’s Social CareとChild Family Social Workerの役割
3.Children’s Social Care以外でChild Family Social Workerが雇用される場
4.児童家庭ソーシャルワーカーの育成体系:Professional Capabilities Framework(PCF)の概要
5.Child Family Social Workerのキャリアロードマップの実際
2017年度研究
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児童相談所と市区町村における児童相談担当職員の人材育成に関する研究(第1報)
研究代表者名 川松 亮(子どもの虹情報研修センター)
1.目的
2016年児童福祉法改正により、児童相談所児童福祉司の研修が義務化されたが、そのうちのスーパーバイザー(以下、SV)研修については児童相談所や地域の子ども家庭相談における要となる人材の育成につながるため、国としても全国的に統一された方法による研修を実施することとなり、子どもの虹情報研修センターがその委託を受けることとなった。そこで、SV研修の効果について測定し今後の研修の質的向上を図ることが必要となり、研修実施効果を検討して、SV研修のあり方について提言としてまとめることを目的に本研究を実施した。
2.方法
2017年度に子どもの虹情報研修センターにおいて実施した、前後期2班編成の計4回の研修について、事前事後に参加者アンケートを実施し、①SV研修到達目標の自己評価、②SVにおける困難度、③研修の満足度、④研修後振り返りシート、⑤修了レポート、⑥講師への実施後アンケートを実施し、SV研修効果についてプロセス評価とアウトカム評価の両面から多角的に検討することとした。また、合わせて、児童福祉領域における国内外のSV育成に関する文献資料を収集し、理論的な到達点を分析して今後のあり方の参考として提供することとした。
3.結果
SV研修を前後期ともに修了した方は175名であった。児童相談所経験年数平均8.9年、児童福祉司経験年数平均6.8年、SV経験年数平均2.0年であった。職種別には、福祉職46.3%、行政職40.6%、心理職7.4%などとなっていた。研修評価のために、国が示した児童福祉司SV研修到達目標を自己チェックする質問項目を作成し、研修前後で自己記入してもらった。知識、技術1、技術2、態度の4領域ごとに到達目標の構造を確認するため因子分析を行い、知識では5因子、技術1では4因子、技術2では3因子、態度では1因子が抽出された。それぞれの因子について、研修前後の得点差を見るといずれも有意に得点が上昇していた。また、SV困難度アンケートについても、5項目中3項目で有意に困難度が軽減していた。このように到達目標の因子構造と研修の効果が明らかになった。
4.考察
児童相談所の歴史を振り返ると、SVの位置づけや役割が時代とともに変化してきている。また、1964年から1986年までは国主催のSV研修が実施されていたが、その後は行われていない。児童相談所のSVに関する研究文献もわずかしか検索できず、SVのあり方に関する研究は十分に行われてきたとは言えない。当センターではかつて、2008~2009年の課題研究において、7タイプのSV方法を整理した。海外に目を転じると、SVの発展とともにその教育が理論化されてきている。特に、Kaudushinのエコロジカル・アプローチによる概念化が注目される。そのソーシャルワーク・スーパービジョンのスタンダード(7眼流モデル)には汎用性があると考えられる。この視点からSV研修の到達目標を整理し、SVが機能するように質の向上を図っていくことが必要である。今回の研修効果測定で、到達目標の因子構造や研修効果が一定程度確認できたが、実務にとってより効果的な研修内容となるように継続した検討が必要である。
2016年度研究
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市区町村児童家庭相談における人材育成モデルについての研究 (第3報) -コーディネート力育成の研修のありかたについて-
研究代表者名 宮島 清(日本社会事業大学専門職大学院)
本研究は、子ども家庭相談事業および要保護児童対策地域協議会の調整機関に携わる職員の専門性の向上、及び要保護児童対策地域協議会の機能の向上を図るため、それぞれを対象とした研修を企画、実施しながら、効果的な研修教材の開発と人材育成体系の構築を目指したものである。平成26年度から3年計画として行なわれており、第1報では「包括的アセスメント力」の育成を図るための研修教材の開発について報告し、第2報では、「ケースカンファレンスを行う力」の向上を目的とした研修のあり方を検討した。今回の第3報においては、「コーディネート」を中心とした研修のあり方を検討し、そのために有効な教材の検討も行った。
有効な研修方法と教材作成のために、まずコーディネートについての考え方を研修の中で解説し、研修生からのフィードバックを得て、「コーディネートの構造」について考え方の整理を行った。次に、その考え方を踏まえて演習を行い、コーディネートに関する有効な研修のあり方を検討した。
研究を進める過程で、コーディネートのための教材開発を進めた。
2015年度研究
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市区町村児童家庭相談における人材育成モデルについての研究 (第2報) -ケースカンファレンスの質的向上を目指した研修と教材の開発について-
研究代表者名 宮島 清(日本社会事業大学専門職大学院)
本研究は子ども家庭相談事業および要保護児童対策地域協議会の調整機関に携わる職員の専門性の向上、及び要保護児童対策地域協議会の専門性の向上を図るため、それぞれを対象とした研修を企画、実施しながら、効果的な研修教材の開発と人材育成体系の構築を目指したものである。平成26年度から3年計画として行なわれており、第1報では「包括的アセスメント力」の育成を図るための研修教材の開発について報告した。今回の第2報においては、「ケースカンファレンスを行う力」の向上を目的とした研修のあり方を検討し、そのために有効な教材の開発を行った。
有効な研修方法と教材作成のために、まず第1ステップとして課題探索的な研修を行い、その結果を踏まえて作成された研修教材を用いて第2ステップとして効果確認のための研修を行った。
研修受講者からは、それぞれの研修の効果についてフィードバックしてもらい、それに基づいての検討を行った。その結果、ケースカンファレンスの演習として次のような方法や教材が有効であることが確認された。
① 模擬事例を活用しての初期対応の演習
② 多機関合同での模擬ケースカンファレンスの演習
③ 事例のまとめシートを活用した資料作成演習
④ 事例を短時間で報告する演習
研究を進める過程で、ケースカンファレンスの質的向上を目指すために有効な研修を実施するための教材開発を進めた。研修で使用した教材をさらに充実させて作成したものを、報告書の中に「付属資料 要保護児童ケースのためのケースカンファレンス・トレーニング」として掲載している。
2014年度研究
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市区町村児童家庭相談における 人材育成モデルについての研究 (第1報)
研究代表者名 宮島 清(日本社会事業大学専門職大学院)
横浜市の子ども家庭相談事業および要保護児童対策地域協議会事務局に携わる職員の専門性の向上を図るため、それぞれを対象とした研修を企画実施しながら、効果的な研修教材の開発と人材育成体系の構築を目指して、横浜モデルとして全国に発信することを目的に、3年計画で実施することとした。初年度はアセスメントの考え方をまとめ、18種類のアセスメント自己研修教材として開発した。これらの教材はWEBトレーニングとして、子どもの虹情報研修センターのホームページにアップした。
2009年度研究
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児童相談所における 児童福祉司スーパーバイズのあり方に関する研究 (第2報)
研究代表者名 川﨑 二三彦(子どもの虹情報研修センター)
本研究は、前年度に実施した研究の継続研究である。ただし前回と違い、共同研究者は現役のスーパーバイザーにお願いした。そして、前年度にあげられた課題である「現在行われているスーパービジョンについて、あらためて具体的に検討」することを目的とし、5人のスーパーバイザーが、自身のスーパーバイズ事例を報告、全員で検討した。またそれらをふまえ、まとめの討議をおこなった。
この中で、現在の児童相談所におけるスーパービジョンを、いくつかの類型に分ける試みを行った。具体的には、①継続指導型、②助言・指示型、③組織対応型、④同席面接型、⑤集団カンファレンス型、⑥ケース進行管理型、⑦その他、である。スーパーバイズの型を区分けすることで、スーパーバイザーは自らの業務内容を客観視でき、自己洞察も進むことで、より適切なスーパービジョンが可能となることが示唆された。
報告書では、こうしたスーパービジョンの事例を報告するとともに、まとめの討議を逐語的に掲載し、現場で役立つよう工夫した。
なお、報告書には、児童相談所執務必携(改訂版)においてスーパーバイザー制度が明記された時代に行われていた全国スーパーバイザー研修について、わかる範囲で紹介し、歴史的な流れも振り返っているので、あわせて参考にされたい。
※報告書全文は援助機関にのみ公開しているため、PDFを開ける際にはパスワードが必要です。パスワードは「援助機関向けページ」へのログインパスワードと同じです。
2008年度研究
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児童相談所における 児童福祉司スーパーバイズのあり方に関する研究 (第1報)
研究代表者名 川﨑 二三彦(子どもの虹情報研修センター)
児童相談所においてスーパーバイザーの果たす役割はきわめて重要である。本研究は、児童虐待対応など児童相談所の専門性を高め、適切な相談援助を行うために、児童福祉司スーパービジョンの現状と課題を明らかにし、児童福祉司スーパーバイザーに必要とされるもの、また児童福祉司スーパーバイズのあり方等について検討し、あわせて今後の改善に向けての提起を行うことを目的として実施した。
具体的には、児童福祉司スーパーバイザーとしての経験を持つ(多くは児童福祉司としてスーパーバイジーの経験も有している)現役の児童相談所長に研究への参加をお願いし、児童福祉司スーパーバイザーの現状と課題を整理した。その結果として浮かび上がってきたのは、次の3点である。
第一は、児童虐待への適切な対応を求められる今日の児童相談所が、経験豊富なスーパーバイザーの存在を強く必要としているという点。
第二は、大きく変化することを余儀なくされた児童相談所の業務などもふまえ、参考資料として示されている「スーパービジョンの要領」を再検討し、現状に沿ったものに改めることが求められているのではないかという点。
第三は、これらの検討を行う上でも、現在行われているスーパービジョンについて、あらためて具体的に検討し、スーパーバイズの実際を明らかにし、スーパービジョンの事例を積み重ねるという点である。
報告書には、各研究者の具体的な経験等についての報告を掲載するとともに、それまで発出されてきた国の指針等を概観してまとめ、児童相談所におけるスーパービジョンについての文献レビューも載せている。
※報告書全文は援助機関にのみ公開しているため、PDFを開ける際にはパスワードが必要です。パスワードは「援助機関向けページ」へのログインパスワードと同じです。 -
研修評価に関する研究ー児童福祉臨床での有益性を評価の視点とした 研修プログラムの作成についてー
研究代表者名 平山 英夫(子どもの虹情報研修センター)
児童福祉施設では、社会的養護ケースに対するアセスメント力の向上が大きな課題の一つとなっている。研修がこの力を養うためにどれだけ有効であったかを検討したのが本研究である。平成20年度児童養護施設職員指導者研修の参加者84名を対象に、次の4つの側面から評価を行った。
①参加者の研修に対する感想(「大変良い」から「工夫が必要」までの5件法)。
②実効性のある具体的な援助プランが策定できたか否か。
③そのプランが実際の支援において有益であったか否か(研修1年後に評価)。
④研修を通しての知識がどれほど深まったか、新たに気づけたことの有無、自身のケースへの気づきの程度。
①については、参加者の主観的評価として8割以上が「良い」以上の評価をしていた。②については、ほとんどの参加者が具体的なプランを立てることができた。④については、アセスメントにかかわる多くの項目で、気づきや新たな知見を学んでいた。③については次年度に評価を行うこととした。
なお概ね良好な結果となったが、その背景として、事前課題として事例の概要作成を求めたこと、事例をさらに簡潔にまとめる演習を取り入れたこと、支援プランを作成する前に、事例で取り上げた子どもについて、課題となる生活場面や伸ばしたい場面等を整理し、支援のポイントを絞ったこと、グループで話し合いながらプランを立てたことなどが挙げられた。
2007年度研究
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センター研修における事例検討の分析―児童相談所等と児童福祉施設74事例の検討―
研究代表者名 四方 燿子(子どもの虹情報研修センター)、川﨑 二三彦(子どもの虹情報研修センター)
子どもの虹情報研修センターは、平成14年に設立されて以後、我が国で児童虐待対応に直接かかわっている児童相談所や児童福祉施設の職員等を対象にして数多くの研修を実施してきた。研修プログラムについては、可能な限り現場の実態に即したものとなるよう努力しているが、その中で重視してきたことの一つは、参加者が現に直面している問題に焦点を当て、現状のどこに困難性があり、何が課題で、どのような解決の道筋があるのか、その方向性を示唆するということであった。中でも事例検討は、1年をとおしてみると現場で抱えている種々の問題がほぼ網羅されており、これらの事例全体が、図らずも現在の我が国の児童虐待の縮図であり、最先端の現場実践の内容をリアルに示しているという点で、大変学びの多いものであった。
本研究は、個々の事例が特定されないことを前提に、センターにおける事例検討を振り返り、再度整理し、分析することで、我が国の児童虐待対応の現状や取り組むべき課題などを浮かび上がらせようとしたものである。
2005年度研究
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児童虐待をテーマとした研修の在り方についてー子どもの虹情報研修センターにおける児童相談所、児童福祉施設職員対象の研修を通してー
研究代表者名 甲能 迪(子どもの虹情報研修センター)
本研究は、子どもの虹情報研修センターで行った研修について、参加状況(地域別、機関・施設別、経験年数別)、研修後の評価、参加者のニーズ(研修内容、研修形態)、参加者の研修後の活動(研修報告、研修活動など)を把握し、まとめたものである。
参加者は年々増加しており、参加者の領域も拡大しつつあることが示された。経験年数については、児童相談所スーパーバイザーの経験年数の短さが示されたが、背景に採用と転勤の問題があることが指摘された。研修への評価は、どの研修もおおむね高く、研修参加者に対する所属長の評価として、「自信がうかがえるようになった」「新たな知見や知見が修得できた」が7割近くを占めた。参加者の研修内容へのニーズとして「ケースカンファレンス」「アセスメント」「保護者の理解と援助」が全ての対象機関や施設で共通してあげられていた。研修形態としては、「テーマを絞った短期濃縮型研修」と「関係機関の合同研修」が高く求められた。参加者の研修後の活動として、児童相談所は「報告書を回覧したのみ」が最も多く、児童福祉施設は「定例の会議などを通して報告」が多かった。事後に研修会を開催する参加者は少なかった。