臨床・実践に関する研究(課題研究)

2015年度研究

  • 今後の児童虐待対策のあり方について (3) 虐待対策における課題解決のための具体策の提言

    研究代表者名 津崎 哲郎(NPO法人 児童虐待防止協会)

     本研究は3年をかけた研究の最終年の報告書である。児童虐待対策の全般的な課題点を整理し、いくつかのテーマに絞ってその課題を克服するための具体的な方向性や方法の提言を試みている。
    1 児童虐待の防止制度を構築していくうえでの理念
     包括的理念と、政策を進める上での重要な政策理念について提示する。
    2 児童虐待対策における課題点とその解決策に向けた提言
     ①24時間通告受理と、安全確認のありかた及び役割分担について
     ②児童相談所の体制強化について
     ③児童相談所の介入と支援役割の矛盾、保護者支援の向上について
     ④家族再統合支援に係る条件、機関連携、親子関係再構築機能の向上、改善について
     ⑤施設からの自立に向けた対策の整備、拡充
    3 医学医療の発展への課題
     今後医学医療関係者が、取り組みを進めるための方向性を提示する。
     ①医学医療の役割の見直し
     ②子どもの心身の健康障害の精査と治療の実施
     ③医学的研究の推進
     ④虐待医療を進める制度整備
    4 虐待保健の発展への課題
     医療保健モデルで虐待を理解し対策を再構築して、系統的に事業化・体制整備し、人材育成を行う必要がある。
     ①虐待保健の役割の見直し
     ②子どもの心身の健康の精査と推進の実施
    5 一時保護及び一時保護所について
     今後の一時保護所の活用に関わっての方向性を提示する。
     ①一時保護をめぐる児童相談所と保護者の対立
     ②一時保護の判断の違いをめぐって
     ③一時保護の活用
    6 統計について
     統計処理が持つ問題点と今後の取り組みの方向性について提示する。
    7 教育分野
     教員初任者研修の実情をレポートし提言を行う。
    8 市町村体制の強化と課題
     市町村の養育支援体制、要保護児童対策地域協議会の方向性を提示し、アメリカ・ワシントン州の取り組みを紹介する。

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  • 市区町村における児童家庭相談実践の現状と課題に関する研究(第2報)

    研究代表者名 川松 亮(子どもの虹情報研修センター)

     2004年に児童福祉法が改正され、市区町村が児童虐待対応の窓口になるとともに、要保護児童対策地域協議会(以下、要対協)が法定されて、すでに10年以上が経過している。この間に、各市区町村では様々な工夫を繰り返して、相談体制の構築や要対協運営の活性化を図ってきた。しかし今だに相談体制が整わず、要対協の効果的運営に至っていない自治体もみられる。本研究は全国で先進的あるいは特徴がある取り組みを実施していると思われる自治体を選定し、ヒアリングを行うことで、市区町村の児童家庭相談実践の現状と課題を整理し、参考になる事例を周知することを目的とした。2年目にあたる本年度は、人口20万人以上の市(政令市、児童相談所設置市を除く)9市のヒアリングを実施した。
     ヒアリング実施自治体はいずれも専門職員複数を含む常勤職員が多く配置されており、人口規模を活かした充実が図られていた。またその職員が地域を分担して担当する体制も構築されていた。この地域割りは、合併前の旧村、保健センターエリア、中学校区など、それぞれの工夫が見られた。これに合わせて、要保護児童対策地域協議会の実務者会議のエリア細分化も図られており、それぞれに定期的な会議を開催することで、小エリアでの密度の濃い協議が行える工夫がこらされていた。
     課題として共通に語られていたのは、関係機関が対応を市に頼ってしまう傾向、進行管理ケースが多いため丁寧な見直しができないこと、会議が情報を報告しあうだけに終わってしまう傾向、事例に関与していない関係機関の参加意欲の低下、調整機関の担当者が相談対応もすることでの難しさなどが指摘された。
     児童相談所との関係においては、児童相談所の判断にゆだねる段階から、自立して独自に判断しながらも双方が協働できている関係までの発展段階があることが想定された。
     いずれの自治体もそれぞれ異なる経緯を持っているが、その自治体にあった取り組みを構築しようという職員の熱意とそれを受け止める市の姿勢があって発展してきたことが感じられた。

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