臨床・実践に関する研究(課題研究)

2020年度研究

  • 児童相談所の保健師のあり方に関する研究

    研究代表者名 中板 育美(武蔵野大学看護学部)

    1 問題と目的
     保健師が児童相談所の基本的機能である相談援助活動:調査、診断、判定(アセスメント)、また援助方針を定めるプロセスにおいて保健師の専門性を用いてどのような活動をしているのか、どのようにそれを発揮しているか等について、現在または過去に児童相談所で活動経験のある保健師と児童相談所で保健師と活動経験のある児童福祉職双方の語りから導き出し、その結果を参照した児童相談所の保健師の活動のガイドラインを作成することを目的とした。
    2 研究報告の内容
     全国の児童相談所で活動しているまたは活動経験のある保健師と、保健師と活動を共にした経験のある児童福祉職に、フォーカス・グループ・インタビュー(以下FGI)を実施し、以下の点を明らかにした。
    ➀ 児童相談所内での保健師の位置づけ
     保健師として配属されている場合と、児童福祉司として配属されている場合もあった。保健師として配属されている人は地区を持たず、児童相談所内で保健師として必要な活動を行っていた。児童福祉司としての配属の場合は、地区を持ち、ケースワークを児童福祉司と同じように行っていた。
    ② 保健師の児童相談所での活動について
     まず〈保健師の居場所づくり〉や〈児相特有の用語に慣れなじむ〉など【児相の中で児童福祉司・保健師が共存できる体制をつくる】ことから始め、〈保健師と児童福祉がチームとなり切磋琢磨して視野を広げる〉ことができるようにしていた。保健師は、自らの専門性を児童相談所内で発揮するため医療機関との関係に力をいれ、児童相談所保健師として〈医師に必要なことを確実に伝える〉などを行い【医療機関と児相の橋渡しする】、【地域の医療機関とのネットワークづくりを進める】ことを行い、医療との連携を強める役割を担っていた。また児童相談所管内の地域全体を視野に入れ【市町村(地域)を底上げし、児相との連携を円滑にする】ことを行っていた。さらに〈児相で行っている支援を見える化していく〉ことを行い、児童相談所としての取り組みを職員に示し、【児童相談所の人材育成に貢献する】ことも行っていた。このような支援においては、保健師がこれまで地域活動のなかでで培ってきた【地域の社会資源をつくる】、【先手必勝(予防)の意識をもつ】、【関係機関、家族との関係づくりを主体に動く】、【健康問題を切り口に支援を広げる】、【思春期の子どもたちに丁寧にかかわる】活動を児童相談所のなかで発揮しながら進めていた。
    ③ 児童福祉司から見た保健師の児童相談所での活動について
     保健師が児童相談所で活動するにあたっては、児童福祉司は、保健師が児童相談所で専門性を発揮してほしいこと、また異なる視点をもつ専門職が組織には必要ということから【お互いの専門性を理解し、児相という組織としての動きをつくる】ことを意識していた。その中で保健師について【基礎的な教育の積み上げから発想できる】人材と考え、【保健分野において培った専門性を発揮する】ことを期待していた。児童相談所における具体的活動については、【医療機関と児相の橋渡しをする】ことや【医療的なアセスメントと支援ができる】など医療との連携における役割を期待していた。また地域の市町村や保健所、市町村児童福祉担当部署を把握しているという強みを活かし【市町村(地域)を底上げし、児相との連携を円滑にする】ことを望んでいた。そして保健師の人材育成についても【児相での経験を保健師のキャリアアップに活かす】ことを期待していた。
     以上の示唆をもとに、「児童相談所での保健師活動ガイド」を作成した。

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  • 児童相談所における保健師の活動ガイド

    研究代表者名 中板 育美(武蔵野大学看護学部)

    「児童相談所の保健師のあり方に関する研究」の中で作成されたものです。

    児童相談所における保健師の活動ガイドダウンロード