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児童家庭支援センターにおける地域支援事業に関する研究―要保護児童に対する児童家庭支援センターの在宅支援の現状―
研究代表者名
武田 玲子(明治学院大学)
研究概要
(1)目的
児童家庭支援センター(以下児家セン)の地域支援事業の現状と課題を共有し、全国統計から経年変化を分析したうえ、全国児童家庭支援センター協議会の協力のもと、児家センの職員に対してアンケート調査を実施し、児家センの地域の支援状況を明らかにする。本研究では、要保護児童に対する児家センの支援状況を検討するとともに、地域支援ネットワークの中で有用な機能を展開させるための体制や方策を見出すことを目的とする。
(2)研究方法
報告書の第1部にまとめてあるが、全国児童家庭支援センター協議会の統計をもとに経年変化、次に共同研究者が所属している3か所の児童家庭支援センターによる先駆的な実践状況(通常の児家セン事業に加えてショートステイ事業など実施)について報告している。
報告書の第2部においては、全国の児家センと児家セン職員へのアンケート調査を報告した。共同研究者と討議し、全国児家センの職員に対するアンケート調査票の質問項目を作成した。 8月に全国児童家庭支援センター協議会の協力のもと、153か所の児家センに所属する児家セン職員812名にアンケート調査を送付した。
(3) アンケート調査結果
全国の児家セン137か所(87%)、児家セン職員812名中624名(76%)の回答があった。アンケート調査について量的分析を行い、自由記述についてはテキストマイニングによる量的分析、定性分析により質的分析を行った。
概要としては、児家セン職員の携わっている率の高い仕事としては「保護者相談、カウンセリング」「関係機関との情報交換」であり、町村を除き「市町村との連絡調整」であった。児家セン職員としてニーズが高いと指摘した事業はすべての自治体規模において「育児不安等の相談」が上位にあがっている。政令市・児童相談所設置市の特徴としては、「ショートステイ・トワイライトステイ」のニーズが高く、一方、その他の地域で高いと考えられているニーズは「不登校支援」「発達相談・療育」などであった。
児家センの職員が特徴的支援として挙げているのは、「アウトリーチ」「食支援を通しての相談」「子育てサロン、講座等地域での子育て支援」「レスパイト」「心理的支援」「子どもへの直接的支援」「里親支援」「要保護・要支援児童への支援」「地域による様々な支援」であった。
児家センの課題としては、職員の年代役割を問わず、「専門性」と「人材不足」があげられ、その改善のためには「運営費」の改善が指摘されていた。
実践可能な方策としては、行政や関係機関との定期的な協議会などの「連携」、相談員や心理職の専門性に応じたスーパービジョンなどの「専門性の確保」、地域ブロックごとの「児家セン間の交流」等が導き出された。
(4)考察
アンケート調査からは、自治体規模により、職員が考えるニーズに違いがあるという結果であり、地域の社会資源の状況により、異なる傾向がうかがわれた。人口規模が多い地域ではショートステイ等レスパイトのニーズが高く、人口が少ない地域では包括的な支援が児家センに求められる傾向がみられた。
現状では、地域による偏りや専門性や人材についての課題があるが、児家セン職員によるアウトリーチ、食支援、子育て講座、育児不安の相談などから孤立する要保護児童への緩やかな介入が行われていた。そこから心理支援、レスパイト、子どもへの直接的支援につなげていく可能性があることも明らかになった。
今回、第1部で報告した先駆的な実践内容、また第2部でまとめた研究結果について、全国レベルで活用されていくことが要保護児童への地域での支援の充実につながると考える。さらに具体的な児家センにおける支援方法を共有していくことは残された研究課題でもある。続きを読む