文献・研究等の収集と分析

2006年度研究

  • 児童虐待の援助法に関する文献研究(第4報:2000~2006年まで)戦後日本社会の「子どもの危機的状況」という視点からの心理社会的分析

    研究代表者名 保坂 亨(千葉大学教育学部教育実践総合センター)

     本研究は、「虐待」という言葉を越えて、児童虐待に対する時代認識の変遷といった社会学的考察も含めて、「危機的状況」におかれた子どもに対する臨床研究や実践報告を概観して分析したものである。この第4報では、2000年から2006年に至る社会状況と2000年以降に出版された書籍を中心に概観したが、それに加えて児童虐待防止法が施行された2000年に発行された雑誌特集号、全国情緒障害児短期治療施設協議会の紀要「心理治療と治療教育」(第1−第17巻)、日本子ども虐待防止学会の「子どもの虐待とネグレクト」誌に掲載された1999年から2006年までの事例についても取り上げた。その結果は、以下の4点にまとめられる。
    (1)  1990年代からはじまる富裕層と貧困層の二極化の流れの拡大が、少子化の進行する中で児童虐待発生ハイリスク層の拡大に影響を与えており、児童虐待をめぐる事件報道も急増した。その中で大きく報道された重大事件が、その後の法律改正や施策に強く影響を与えたと考えられる。
    (2)  2000年からの新たな動向としては、①保育、教育関係の専門家養成用テキストに児童虐待が取り上げられるようになったこと、②翻訳書の大量の出版、③児童虐待を中核とした「子どもの危機的状況」の歴史を振り返る作業が始まったことがあげられる。
    (3)  情緒障害児短期治療施設において児童虐待問題がどのように取り上げられ、被虐待児への心理臨床的援助を担うようになってきたかについて概観した。
    (4)  事例分析からは、被虐待児の心理臨床的援助が、施設内「環境療法」から「総合環境療法」へと展開していることが確認された。
     なお、本報告書では、児童虐待をめぐる記述の正確さに関する疑問と、第3報の続編として「バックラッシュ」問題について、2000年以降の国内外動向について報告した。

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