文献・研究等の収集と分析

2008年度研究

  • 児童虐待の援助法に関する文献研究 戦後日本社会の「子どもの危機的状況」という視点からの心理社会的分析

    研究代表者名 保坂 亨(千葉大学教育学部教育実践総合センター)

     これまでの一連の研究は、「子ども虐待」を超えて子どもの「危機的状況」という視点から、戦後日本社会の臨床研究、文献、実践報告等を概観して分析し、戦後から2007年までを第1報から第4報としてまとめてきた。それをふまえて本報告では、性的虐待と教育心理学関係の教科書という2つのテーマについて分析した。
    (1)  2000年の児童虐待防止法施行以降、身体的虐待やネグレクトのケースについては、児童相談所をはじめ、さまざまな機関が積極的に対応を進め、新たな施策や対応方法が進んできているが、「性的虐待」については、十分に取り組めていない観がある。そこで、2000年以降の性的虐待に関する研究や文献、実践報告等を改めて分析し、研究の歩みや社会の性的虐待に対する認識、取り組み状況を分析した。そして、性的被害の後遺症が極めて深刻であること、被害児童に対する福祉的援助の必要性を考えて性的虐待についての日本の定義を見直すべきであること、早期発見・対応の難しさなどを指摘した。また、性的虐待や性的被害の内容は多岐に及び、受ける年齢や状況によってその影響は異なるため、個々の実情に合った治療的手立てを見出していくことの重要性をあげた。
     加えて、報告書では性的虐待に関する文献を5つ紹介している。
    (2)  教育分野においては子ども虐待対応における取り組みがいまだ十分でない状況が見られる。そこで、1990年代から現在に至るまでに出版された教員養成系の大学で用いられる教育心理学の教科書120冊の分析を行った。その結果、児童虐待についての記述が少なく、重要な情報すべてが記述されているわけではないこと、児童虐待に関する法制の目まぐるしい変化に対応できず、「虐待に関する法制・機関」の記述が全体的に少ないことを指摘した。

    報告書ダウンロード