文献・研究等の収集と分析
2015年度研究
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児童虐待に関する文献研究 精神障害をもつ保護者による虐待
研究代表者名 長尾 真理子(白百合パークハイム)
本研究は、「子ども虐待」に関する文献の概観・分析を目的とした継続研究である。本報告書では、「精神障害をもつ保護者による虐待」をテーマに、4つの視点から文献研究を行なっている。まずは、先行研究の全体的な概観を行なった。ここでは、親の精神障害は虐待のリスク因子の1つであること、児童相談所が扱った児童虐待事例を対象とした調査では約3〜6割の保護者が心身に何かしらの問題を抱えていることなど、これまでに明らかになっている知見についてまとめている。次に、妊娠中のアルコールや覚醒剤等の摂取が子どもの認知的・行動的問題に及ぼす影響について、海外の文献を中心に概観している。そして、これまでの研究において、妊娠中のアルコールや薬物の摂取が、子どもの認知機能低下を引き起こすこと、行動や適応の問題に関連があることが明らかにされていることを示した。3つ目は、児童相談所の事例集である「児童相談事例集」を対象に、精神障害を抱える養育者の虐待事例137例について分析した。最も多かったのは「アルコール使用障害」であり、次いで「パーソナリティの異常」、「統合失調症」などの事例が続いている。最後に、平成24・25年度に発表された自治体による死亡事例検証報告書のうち、加害者である保護者に精神障害があった事例19例について検討している。それにより、支援機関が関わっているもののタイミング良く変化を捉えることが難しいこと、アセスメントの精密度を上げる必要性があることなどを明らかにした。
なお本研究においては、多くの文献や事例を対象とするため、明確な診断名がついていなくても精神障害の疑いがあるとされている事例等も含んでいる。最後に、2014年および2015年の児童虐待に関する文献一覧を掲載しているので参考にされたい。