児童虐待に関する海外の状況の把握と分析

2014年度研究

  • アジアにおける児童虐待への取り組みに関する研究 体罰の防止に向けて (第2報)

    研究代表者名 柳川 敏彦(和歌山県立医科大学)

    虐待に対する取り組みの先進国である欧米諸国の実態や取り組みは、従来からわが国に紹介され、わが国の対策の一助となっている。一方、アジア地域で子どもの人権擁護の概念が今なお乏しく、家庭、学校等における体罰の是非についての社会的課題が依然大きく残されている。本課題研究は2年間研究で、アジア各国の児童虐待の現状を明らかにすること(25年度)、体罰対応の課題を抽出・分析し、アジアにおける今後の虐待対策に資すること(26年度)を目的とした。
     26年度研究では、国際児童虐待防止学会の中で開催された新興国フォーラムでの「体罰の撲滅」ワークショップからアジア各国(イラク、日本、中国、韓国、タイ)の報告等を収集した。
     現状は家族/家庭、学校、地域等、日常の場面で児童への体罰が広く蔓延していることが再確認された。体罰の定義・認識は強者の立場による定義が使用されていること、「児童の権利」が依然として尊重されていないこと、体罰による児童への悪影響の知識が不十分であることなどが課題として抽出された。「体罰の撲滅」への対応は、あらゆる子どもを対象に、いかなる場面、いかなる地域においても「児童の権利」を基盤とすることが必須であり、「体罰意識の変容」、「あらゆる体罰を禁止する法律」、「前向きな子育て」等のキーワードが採択された。今後は、多職種の関与による具体的、実践的な社会整備が望まれるとともに、若い世代に対して学校等の教育場面での周知が必要である。

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