人材育成に関する調査研究

2017年度研究

  • 児童相談所と市区町村における児童相談担当職員の人材育成に関する研究(第1報)

    研究代表者名 川松 亮(子どもの虹情報研修センター)

    1.目的
     2016年児童福祉法改正により、児童相談所児童福祉司の研修が義務化されたが、そのうちのスーパーバイザー(以下、SV)研修については児童相談所や地域の子ども家庭相談における要となる人材の育成につながるため、国としても全国的に統一された方法による研修を実施することとなり、子どもの虹情報研修センターがその委託を受けることとなった。そこで、SV研修の効果について測定し今後の研修の質的向上を図ることが必要となり、研修実施効果を検討して、SV研修のあり方について提言としてまとめることを目的に本研究を実施した。
    2.方法
     2017年度に子どもの虹情報研修センターにおいて実施した、前後期2班編成の計4回の研修について、事前事後に参加者アンケートを実施し、①SV研修到達目標の自己評価、②SVにおける困難度、③研修の満足度、④研修後振り返りシート、⑤修了レポート、⑥講師への実施後アンケートを実施し、SV研修効果についてプロセス評価とアウトカム評価の両面から多角的に検討することとした。また、合わせて、児童福祉領域における国内外のSV育成に関する文献資料を収集し、理論的な到達点を分析して今後のあり方の参考として提供することとした。
    3.結果
     SV研修を前後期ともに修了した方は175名であった。児童相談所経験年数平均8.9年、児童福祉司経験年数平均6.8年、SV経験年数平均2.0年であった。職種別には、福祉職46.3%、行政職40.6%、心理職7.4%などとなっていた。研修評価のために、国が示した児童福祉司SV研修到達目標を自己チェックする質問項目を作成し、研修前後で自己記入してもらった。知識、技術1、技術2、態度の4領域ごとに到達目標の構造を確認するため因子分析を行い、知識では5因子、技術1では4因子、技術2では3因子、態度では1因子が抽出された。それぞれの因子について、研修前後の得点差を見るといずれも有意に得点が上昇していた。また、SV困難度アンケートについても、5項目中3項目で有意に困難度が軽減していた。このように到達目標の因子構造と研修の効果が明らかになった。
    4.考察
     児童相談所の歴史を振り返ると、SVの位置づけや役割が時代とともに変化してきている。また、1964年から1986年までは国主催のSV研修が実施されていたが、その後は行われていない。児童相談所のSVに関する研究文献もわずかしか検索できず、SVのあり方に関する研究は十分に行われてきたとは言えない。当センターではかつて、2008~2009年の課題研究において、7タイプのSV方法を整理した。海外に目を転じると、SVの発展とともにその教育が理論化されてきている。特に、Kaudushinのエコロジカル・アプローチによる概念化が注目される。そのソーシャルワーク・スーパービジョンのスタンダード(7眼流モデル)には汎用性があると考えられる。この視点からSV研修の到達目標を整理し、SVが機能するように質の向上を図っていくことが必要である。今回の研修効果測定で、到達目標の因子構造や研修効果が一定程度確認できたが、実務にとってより効果的な研修内容となるように継続した検討が必要である。

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