人材育成に関する調査研究

2021年度研究

  • 人材育成に関する調査研究 ─ 専門職の養成・育成における実習及び実務訓練─

    研究代表者名 保坂 亨(千葉大学教育学部)

    1 目的
     現在、わが国では児童福祉司等の児童家庭ソーシャルワーカーの専門性の向上と、それに伴う国家資格化が課題となっている。2019年の改正児童福祉法において、児童福祉の専門知識・技術を必要とする支援者の資格の在り方や資質の向上策について、施行後1年を目途に検討を加えることが規定され、社会保障審議会児童部会社会的養育専門委員会に「子ども家庭福祉に関し専門的な知識・技術を必要とする支援を行う者の資格の在り方その他資質の向上策に関するワーキンググループ」が設置された。その結果、子ども家庭福祉分野で支援を行う者の専門性の向上が必要不可欠とされ、資格・研修・人材育成の在り方、人事制度・キャリアパスについて目指すべき方向性としての「とりまとめ案」が作成された。
     本研究の1年目にあたる2020年度は児童福祉以外の専門職、特に古くから国家資格を有している医学・法学・教育における国家資格の在り方(業務独占・名称独占等も含む)、その養成(コアカリキュラムの位置づけ・実習を含む)と任用後の育成研修について等の歴史的経過を概観し、各専門職の現状と今日的な課題を把握した。さらに、医学・法学・教育学間で比較検討する作業を通して、児童福祉領域の専門性の在り方(資格及び養成・研修等)に資する課題を検討した。この研究において明らかとなったことは、専門職の養成や育成にとって現場の実務訓練が重要な意味を持つということである。
     続く本研究(2年目)では、任用後の育成計画等のビジョン、インターンシップ(実務経験システム)、スーパーバイズ、人事交流など、特に育成のレベルに合わせた実務訓練(OJT)に焦点を当て、児童相談所の児童福祉司を中心に子ども家庭福祉領域における実態、及び養成校で実施されている実習、スーパーバイズ等についても現状と課題を把握することを目的とした。

    2 方法・結果
     以下4つの調査研究を行った。
    ① 岡山県・神奈川県・横浜市・港区児相の4か所に対する人事育成についての資料提供、及びOJTに関するヒアリング調査。
    ② 防衛医科大学(熊谷裕生教授)に対する医学領域における人材育成(特に初期研修)についてのヒアリング調査。
    ③ 日本社会事業大学(宮島清教授)に対する福祉領域における人材育成(特に実習)についてのヒアリング調査。
    ④ 立命館大学(仲真紀子教授)に対して、他職種連携による「司法面接」研修プログラムに関するヒアリング調査。
    これらの調査結果をもとにして、2020年度に把握した医療、法曹、教育領域におけるOJTの状況との比較検討を踏まえて、子ども家庭福祉領域におけるOJTの体制や方法についての課題を分析・考察した。

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