人材育成に関する調査研究

2022年度研究

  • オンライン研修の導入による変化と今後の展望

    研究代表者名 中垣 真通(子どもの虹情報研修センター)

    1.問題と目的
     2019年度末から始まった新型コロナウイルスの感染拡大により、参集型研修の実施が困難になったため、子どもの虹情報研修センターでは2020年度からWeb会議ツールを利用したオンライン研修を導入した。2020年度初めの時点では、受講する側も容易にオンライン研修を受講できる環境になかったが、各職場の通信環境等のアンケート調査を行い、6月には試行的なオンライン研修を実施した。2020年度後半以降は、オンラインを主たる方法として研修を実施している。
     本研究では、オンライン研修の効果と課題、今後の発展的利用の方向性を明らかにし、オンライン研修を活用するための有用な情報を提供することで、他機関が人材育成のために実施する研修のより一層の充実に資することを目的とした。

    2.研究の内容
     研究報告書の章立てに沿って紹介する。序章では、オンライン研修導入の前提となる社会背景や先行する取り組み、研修に関する理論や方法などについて先行研究を踏まえて、整理を行なった。
     第2章では、虹センターが実施する専門研修の基本的な構想とオンライン研修の導入経過を概観した。オンライン研修の導入経過については、2020年度以前の取り組み状況から時系列で詳細に整理を行い、研修方法の大幅な変化に虹センターがどのように検討を重ね、対応してきたか報告した。オンライン研修を導入したことによって、研修の進め方に大きな変化が生じ、対面で実施する研修に比べると、オンライン研修は受講者間の相互交流に制約がある半面、事前に講義映像で予習するオンデマンド学習や講義中の一斉アンケートの実施が可能になる等の利点もあった。
     第3章では、オンライン研修は、研修にどのような効果をもたらし、今後どのように発展が期待できるのか、アンケート調査の結果を報告した。2022年5月から11月に3つのアンケート調査を実施し、それぞれ958名、850名、563名からの回答を得た。特に、研修手法(参集、ライブ配信、オンデマンド配信など)や科目形態(講義、演習、グループ討議など)ごとの特徴、オンライン研修受講者の受講環境に着目して分析を行い、その結果を報告した。
     第4章では、虹センターがオンライン研修を導入して得た経験とアンケート調査の結果、先行研究による知見を照合しながら検討を加え、今後の研修の方向性について考察した。また、虹センターがオンライン研修を実施する際に配布する操作手順書なども掲載し、関係機関においてオンライン研修を企画及び運営する際の参考資料を提示した。

    報告書ダウンロード

  • 専門職の養成と任用後の育成に関する研究:OJTとその評価をめぐって

    研究代表者名 保坂 亨(千葉大学)

    1目的
     福祉領域においての専門性の確保について、特に児童福祉領域においては、その取り組みは遅かったと言わざるを得ない。しかし、「新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会」報告書(2016年)以降、ようやく本格的な議論が始まり、2022年に成立した「児童福祉法等の一部を改正する法律」において、新たなこども家庭福祉のソーシャルワーカーに関する資格を内閣府令で定めることが盛り込まれた。これを受けて、「子ども家庭福祉の認定資格の取得に係る研修等に関する検討会及びワーキンググループ」が設置されて議論を重ね、2023年3月に「とりまとめ案」が提出されたところである。
     本研究(2020-2022年度)は、こうした動向の中で専門職の人材育成について、福祉領域以外に広く視野を広げて資格と育成の仕組みを比較検討することを目的としたものである。医学・法曹・教育・福祉領域では、同じ国家資格を有する専門職でありながら、その資格のあり方や育成方法は様々である。しかし、これらの領域を超えて専門資格や育成について比較・検討したものは、ほとんどないと言ってよい。そこで本研究は、多角的な視点から他領域の現状と課題を把握しながら比較検討することによって、資格を含めて児童福祉領域に必要な専門性や養成研修のあり方など人材育成に資する基礎資料の作成を目指して始められた。

    2 方法及び結果
     本(2022)年度は、福祉領域における大学及び大学院という養成段階、とりわけ実習に焦点をあてた調査研究を行った。具体的には、日本社会事業大学と長野大学大学院における人材育成の実際を面接調査によって把握した。なお、この日本社会事業大学の専門職大学院については、2021年度報告でも取り上げた。また、教育領域として香川大学の教職大学院の人材育成の実際を面接調査によって把握し、千葉大学教職大学院との比較検討を実習を中心に行った。
     そして、これらの調査研究を踏まえて、以下三つの論考にまとめた。
    1 研修における「履修」と「修得」
    2 教員養成における実習から専門職の養成について考える
    3 専門職の人材育成:領域を超えた検討
     最後に福祉領域(こども家庭福祉)における認定資格の論点を整理した。さらに、領域を超えた課題である「専門家」資格の停止・剥奪問題に関する資料として、「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律」(2021年6月4日公 布)等を付した。

    報告書ダウンロード