人材育成に関する調査研究

2023年度研究

  • 児童福祉施設職員の育ちの語り

    研究代表者名 増沢 高(子どもの虹情報研修センター)

    1. 目的
     児童福祉施設職員で、20年以上のベテランの職員が、どのように専門性を身に着けて、育成の道筋をたどってきたのかを、職員へのヒアリングを通して探る。
    20年以上児童福祉施設に従事している職員(児童指導員、保育士、心理士)に、自らの成長過程を振り返り、資質と専門性を高めるためにどのような体制の中で、どのような体験や取り組みが有益であったか等を、半構造化面接を用いて把握し、人材育成において必要な要件を見出すことを目的とする。
     家庭的養育の推進に向けて施設の小規模化や地域分散化が謳われる一方、今日の施設は子どもの抱えた課題からの回復と親子関係調整のための養育・支援技術が求められている。その実現においては、子どもと直接関わる養育者を支え導く支援体制が求められ、実務現場における中核となる職員が、その重責を担うことになるものであり、特に、上級職員や基幹的職員のコンピテンシーが重要となるであろう。
     以上のことから、本研究は、児童福祉施設(児童養護施設と児童心理治療施設職員の児童指導員、保育士、心理職)の上級職員、基幹的職員、管理職の立場にある、施設実務経験20年以上の職員を対象に半構造化面接を行い、自身の成長や専門性の獲得に貢献した問題意識や動機、資質や価値観、知識や知見等の学び、実務における様々な体験等を把握、整理して、人材育成に必要な要件を見出し、施設の支援拠点のリーダーとして備えるべきコンピテンシーモデルを明らかにすることを目的とする。

    2. 研究の内容
     合目的的サンプリングにより、20年以上児童福祉施設に従事している職員(児童指導員、保育士、心理士)について、9名の面接対象者を選定した。児童養護施設5名、児童心理治療施設4名であり、男・女、指導員・心理士などのバランスにも留意して対象者を抽出した。
     半構造化面接では、新人(~3年目)、中堅(4~6年目)、ベテラン(7年以上)のように時期ごとに区切り、専門職として、あるいは人として自身の成長に役立ったことや印象に残った体験などについて聞き取りを行った。必要に応じて、体験についての理解を深めるための質問を行った。
     分析は面接対象者ごとに行い、面接を逐語化した上で、各事例の個別性を損なわない形で、専門職としての成長過程を記述した。各事例についてターニングポイントとなった出来事を抽出し、全体に共通する要素については以下の点が挙げられた。
     ・志望の動機(「個々の子どもの心にかかわる」ことと「そこに影響を与えている暮らしの現実や社会問題」との間)
     ・想定外の事象に直面すること
     ・支援を通して得た疑問や気づきが成長を促す
     ・導き手やモデルの存在
     ・実践からの学びの重要さ
     ・困難な事態を乗り越えることが、大きな転機となること
     ・現場から離れて俯瞰すること
     ・より包括的な視点への展開と組織つくり

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